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最終号『ITアーキテクト Vol.25』を刊行
特集/特別企画は『これからのITアーキテクト/開発者のあり方』、『システム設計手法の変遷』、『クラウド時代のWebアプリ開発作法』、『分散キー/バリュー・ストアの実力』、『人を育てる5つのポイント』の5本
2009年9月25日更新
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9月25日、『ITアーキテクト Vol.25』を刊行した。 先日お知らせしたように、残念ながら今号をもって本誌は休刊する。この最終号では、読者が「システム開発の今後」を少し長いスパンでとらえ、考える際のヒントとなるような企画を取りそろえた。
予告したように、最終号の特集1のテーマは『これからのITアーキテクト/開発者のあり方』だ。企画の狙いは先日のお知らせに書いたとおりだが、企業システムやIT技術者を取り巻く状況が大きく変わりつつある中で、この先ITアーキテクトなど開発者はどう生き残っていけばよいのかについて、業界を代表するトップ・アーキテクトら16名に見解を聞いた。コメントをお寄せくださったのは、次の方々だ(併せて、コメントのタイトルも記した)。
●榊原 彰氏(日本IBM)――『これからの時代のITアーキテクト――踏み込むべきはビジネス・アーキテクチャの領域』
●羽生田 栄一氏(豆蔵)――『ソフトウェア開発とITアーキテクトの今後』
●相原 慎哉氏(みずほ情報総研)――『ITアーキテクトからエンタープライズ・アーキテクトへ』
●浅海 智晴氏(匠Lab)――『ソフトウェア開発は「What」と「Meta」の時代へ』
●荒井 岳氏(日立コンサルティング)――『ITアーキテクトよ、ビジネスを語れ!』
●石田 裕三氏(野村総合研究所)――『“多角的な視点”を持ち合わせた開発者を目指せ!』
●小野沢 博文氏(日本オラクル)――『“一生涯の仕事”としてITアーキテクトを目指せる環境整備を!』
●開米 瑞浩氏(アイデアクラフト)――『ITアーキテクトは“手作り感覚”を忘れるな!』
●笠原 規男氏(豆蔵)――『漠然とした要望をアーキテクチャへと導く“要求分析能力”を磨け!』
●鈴木 雄介氏(グロースエクスパートナーズ)――『システムを周囲の環境まで含めて考えよ!』
●成本 正史氏(米国マイクロソフト)――『環境の変化をポジティブにとらえ活躍の場をつかめ!』
●萩本 順三氏(匠Business Place)――『ビジネス戦略に基づくアーキテクチャを描く能力を磨け!』
●林 浩一氏(ウルシステムズ)――『“バイリンガル技術者”が拓く日本の未来』
●東 健二氏(NEC)――『状況に応じてさまざまな様式を使いこなす“指揮者”たれ!』
●檜山 正幸氏(http://www.chimaira.org/)――『ソフト開発の現場にサイエンスを!』
●山岸 耕二氏(メソドロジック)――『業務とITを一体とし、その全体最適化を図る視点/能力を養え!』
コメント・タイトルからもご推察いただけるように、さすが第一線で活躍中の方々だけあり、現状を的確にとらえ、明確な問題意識を持ち、それぞれの立場/考えで将来についての見通しを立てておられる。彼らの見解から、この先のシステム開発や開発者のあり方について、多くの示唆が得られるはずだ。この特集はぜひとも、すべてのIT技術者の方々にお読みいただきたい。
続く特集2で取り上げたのは、『システム設計手法の変遷』である。
ITシステムの設計手法はこれまで、情報技術(IT)の発展や市場/組織のニーズ、ITインフラ環境などに応じて変化してきた。まず最初に登場したのは「構造化設計」だ。1968年、オランダの情報工学者であったE.W.Dijkstra氏が、当時プログラマーに多用されていたgoto文を「有害だ」と主張し始めたのがきっかけであった。これを契機に、基本的な制御構造を組み合わせてプログラムを作る「構造化プログラミング」が提唱されるようになり、機能分割の考え方など、構造化設計の基礎理論が構築されていった。その後、構造化設計は、凝集度と結合度という概念を取り入れた「インタフェース中心」と、データ・モデルに重点を置く「データ中心」という2つの軸で進化していく。
そして1990年代に入ると、変化への対応力や開発スピードが重視されるようになり、「オブジェクト指向設計」が登場する。オブジェクト指向設計は、カプセル化やポリモーフィズムなど、オブジェクト指向プログラムの動作原理も基にしながら発展していき、今日では、あまたのシステム設計手法の中でも主流の地位を占めるまでになっている。
システムの設計手法は、大筋ではこのように進化してきたが、普段の仕事の中でこうした変遷について意識することはあまりないだろう。だが、システムの設計手法が、これまでどのような方向性で発展してきたのかを知ることは、今後のシステム開発のあり方を考えるうえで不可欠だ。本特集では、標準的な方法論が整備され始めた1970年代以降を対象に、代表的な設計手法の概要や関連技術を解説したうえで、それを通じて現在、国内のシステム開発業界が抱えている課題や、今後の発展の方向性を考察している。
一方、特集3『クラウド時代のWebアプリ開発作法』では、クラウド上でWebアプリケーションを開発する際のポイントや、従来の開発との違いなどについて考察している。
今日、アマゾンの「Amazon EC2」やグーグルの「Google App Engine」など、クラウド・サービスの形態をとったWebアプリケーション開発/実行環境(クラウド・プラットフォーム)の存在感は増すばかりだ。登場当初は曖昧模糊としたイメージで見られていたクラウドだが、すでに1つの技術体系として広く認知されつつある。遠くない将来、大きなコスト・メリットをもたらすクラウド・プラットフォームが、企業システムの開発/運用で広く利用される日が来るかもしれない。
本特集の目的は、その“クラウド時代”への備えとして、クラウド・プラットフォーム上でのWebアプリケーション開発とはどのようなものなのか、それに挑む開発者にはどのような準備が必要になるのかを明らかにすることにある。具体的には、負荷分散や非同期処理、分散処理といったクラウド技術の概要や、クラウドのアーキテクチャについて説明したうえで、クラウド時代に向け、開発者はどう備えるべきかを考察している。
また、そのクラウドで今日、中核技術として注目されている分散キー/バリュー・ストア(KVS:Key-Value Store)に焦点を当てたのが、次の特別企画1『分散キー/バリュー・ストアの実力』だ。
クラウドの技術的な特色の1つは、データの格納手段として、今日のシステム開発で一般的に使われているリレーショナル・データベース(RDB)ではなく、分散KVSを利用するという点である。分散KVSは、RDBでは標準的なトランザクション管理やテーブル結合などの機能はサポートしていない、極めて素朴な仕様のデータ・ストアだが、その簡素さゆえに驚異的なスケーラビリティを有している。それが、膨大な量のデータを扱うクラウド環境で絶大な威力を発揮するのだ。
現に、グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど主要各社が提供するクラウド・コンピューティング・サービスでは、主なデータ保存手段として分散KVSを提供している。なかでも、グーグルのGoogle App Engine(GAE)では、同社が独自に開発した分散KVS「Bigtable」が唯一のデータ保存手段として使われており、このGAEには、Bigtableを使いやすくする(従来のプログラミング手法で扱いやすくする)ためのデータ保存用APIとして「Datastore API」が用意されている。本企画では、このBigtableとDatastore APIを例にとり、分散KVSの特徴やメリット/デメリット、活用のポイントなどを解説している。
そして、最後の特別企画2では、『人を育てる5つのポイント』と題し、アーキテクトが後輩や部下を育てるうえで知っておくべきこと、やるべきことをまとめた。
通常、優れたアーキテクトに対しては、開発プロジェクトを技術面でリードすることだけでなく、後進を育成することまで期待される。しかし、多くのアーキテクトは、技術のプロフェッショナルではあっても、人材育成に関しては素人同然だろう。アーキテクトになったからといって、急に部下や後輩を育てろと言われても、具体的に何をすればよいのかピンと来ないという方が少なくないはずだ。とりあえず、自分が有する技術知識を教えて満足してしまうようなケースもあるかもしれない。
しかし、本当の意味で人を育てるには、単に知識を教えるだけでなく、先達として目標を示したり、気づきを与えたりすることも必要である。特に、これからのシステム開発の世界において、後に続く技術者をより適切な方向へ導いていけるのは、かつて同じ道を歩んだ経験のあるアーキテクトであることは間違いない。本企画では、後輩や部下を育てる際にアーキテクトが知っておくべきポイントを5つ示したうえで、ありがちな失敗例も挙げながら、育成のコツを紹介している。
以上が最終号の特集/特別企画だ。ほかに、連載記事として『サービス指向で挑むシステム統合』、『ステークホルダーを納得させる問題解決テクニック』、『ITアーキテクトのためのアタマの体操』、『勝手にアーキテクチャ分析』、『トップ・アーキテクトの履歴書』などを掲載している。
2005年6月にVol.1を刊行し、同年11月より隔月で定期刊行してきた本誌も、これにて休刊だ。今号の特集1で現役アーキテクト諸氏が述べているように、アーキテクトのあり方は、この先変わっていくかもしれない。しかし、社会がITを真に有効活用していくうえで、今後もアーキテクト(もしくは相当職)の存在が鍵となるのは間違いない。ぜひ多くのIT技術者に、この役割を担うべく、引き続き切磋琢磨を続けていただきたい。いつの日か、また別なかたちで読者と会える日が来ることを願いつつ、本誌は休刊に入る。









