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ITA Issue 特別企画 : 相手の「解釈」に着目しながら問題を整理/構造化する、「合意形成」のためのモデル化テクニック

ロジカル・シンキングのツボ

第1回 ロジカル・シンキングの基本テクニックと、それを拡張した“新”思考テクニック体系「MALT」

企業戦略/企画の領域では、顧客が抱える課題を整理して解決策を導き出す際、コンサルタントらが「ロジカル・シンキング」と呼ばれる思考テクニックを駆使していることはご存じだろう。これはITプロジェクトにも援用可能な優れたテクニックだが、主に物事を論理的に整理することに重きが置かれ、対象とする範囲が狭いという問題がある。ITプロジェクトに限らず、“だれか”のために行う活動では、その“だれか”による評価がプロジェクトの成否を決める。つまり、相手の最終的な合意を得られるかどうかが鍵となるわけだ。本企画では、その観点からロジカル・シンキングのテクニックを拡張し、さらにITの世界で培われた知恵を取り込んでさまざまなノウハウを形式知化したロジカル・シンキング体系「MALT」と、それを使った合意形成の流れを2回にわたって紹介する。

2009年6月29日更新

text ●  林 浩一 ウルシステムズ ディレクター

ロジカル・シンキングの基本テクニック

 ロジカル・シンキングとは、説得力のある提案をしたり、スムーズに課題を解決したりするために使う思考テクニックのことである。例えば、プロジェクトが抱えている課題をどうすれば解決できるのかを考え、その案を顧客に提示して説得したり、判断を促したりするときなどに使う。ひと言で言えば、結論を導き出すために必要な情報を構造化するための手法だ。ここでは、この「結論を導き出すために必要な情報」を構造化したものを「論理構造」と呼ぶ。

図1:ロジカル・シンキングの3種類のテクニック

 一般的なロジカル・シンキングの解説書では、「SoWhat?/Why So?」、「MECEとフレームワーク」、「ロジック・ツリー」という3種類のテクニックが紹介されていることが多い(図1)。いずれも、論理構造を組み立てるための基本的なテクニックである。まずは、これらについて簡単に説明しておこう。

●So What?/Why So?

 論理構造は、基本的に結論とそれを支える根拠から成る。説得力のある提案をするには、まずこれらが両方そろっているかどうかを確認しなければならない。そのための問いかけのテクニックが「So What?/Why So?」だ。「So What?」とは「結局どういうこと?」という意味で、結論が明確になっているかどうかを確認するものである。一方、「Why So?」とは「なぜそうなるのか?」という意味で、根拠が明確になっているかどうかを確認するものだ。この2つを問いかけることで、その提案の論理構造が成り立っているかどうかを確認できる。

●MECEとフレームワーク

 ロジカル・シンキングの大きな特徴は、現状の課題を適切に整理/分析した論理構造を根拠として使うところにある。このために使用する構造化のテクニックが、MECEとフレームワークだ。

 MECEとは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字をとったもので、情報や課題をモレなく、ダブりなく分類するという考え方である。物事をMECEな状態に整理する(モレがなく、ダブりもない状態にする)ことで、検討漏れのない説得力のある論理構造を組み立てられるというわけだ。

 一方、フレームワークは、多くの人によって使われている構造化のパターンのことである。さまざまな理論に基づくフレームワークが多数存在しており、ロジカル・シンキングの解説書の多くは、フレームワークのことを「MECEな構造の代表例」として扱っている※1

※1 例えば、企業戦略/企画の領域で使われる主なフレームワークとしては、企業が置かれた状況を分析する「3C」、目標に向けてマネジメントを改善していくためのサイクルを規定した「PDCA」、企業活動を「企業が提供する製品やサービスに付加価値を与える一連の活動」としてとらえて分析するための「バリュー・チェーン」などがある。

●ロジック・ツリー

 ロジック・ツリーは、根拠を構造化するためのテクニックの1つだ。「MECEを多段に繰り返して出来る構造」などと説明している解説書が多いが、要するに課題や状況を整理するためのツリー構造、もしくはそれによって整理した具体的な論理構造のことを指す。ロジック・ツリーには、目的や状況に応じてさまざまな種類があるが、後ほど、その中の代表的なものを紹介する。

暗黙知の形式知化

 上述した3つのテクニックは、解説書を読んだり、セミナーに参加したりすることで、知識として学ぶのは簡単だ。しかし、それを現実の課題に適用しようとしても、独力では説得力のある提案を作るところまで到達できないことが多い。そのため、コンサルティング会社では、これらのテクニックを使いこなせるようにするために、業務を通じた訓練を長期間にわたって行っている。つまり、ロジカル・シンキングの基本テクニックは、理論としては簡単だが、使いこなすには経験を積み重ね、解説書には書かれていないノウハウを蓄積する必要があるのだ。

 こうした明文化されていない知識は、一般に「暗黙知」と呼ばれており、高度な知的能力の多くはこのかたちで存在する。暗黙知は、伝えたり、習得したりするのに非常に時間がかかる。先述のとおり、ロジカル・シンキングもその例外ではない。

 では、その習得にかかる時間を短縮する方法はないのだろうか。アプローチの1つとして、この暗黙知を形式知化する方法が考えられる。形式知とは、暗黙知とは逆に、明文化された知識のことだ。知識を形式知化すれば、スキル習得に要する時間を劇的に短縮できるようになる。

 暗黙知と形式知の関係は、文法知識の例で考えるとわかりやすい。日本語の文法は言葉で説明できるので、形式知の一種である。ただし、日本に生まれた人ならば、特別に日本語の文法を学ばなくても日本語を習得できる。おかしな言い回しを見聞きすれば、おかしいとすぐにわかるだろう。しかし、文法を知らなければ、その根拠を求められても「何となく」としか答えられない。その場合、その人の中で日本語の文法は暗黙知の状態にある。

 これに対して、外国語を習得しようと考えた場合、まずは形式知である文法を学ぶだろう。経験を通じ、暗黙知として外国語を習得するのに比べ、形式知を使ったほうが圧倒的に学習時間を短縮できるからだ。こうしたことから、筆者はロジカル・シンキングについても暗黙知となっている部分を形式知化できれば、ロジカル・シンキングの習得効率を大幅に高められると考えた。本企画で紹介するのは、その形式知化したロジカル・シンキング・テクニックである。

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