1. HOME »
  2. ITA Issue

ITA Issue Article

ソーシャルブックマークに登録 : Yahoo!ブックマークに登録 はてなブックマークに登録 del.icio.usに登録 newsing it!に登録 Buzzurlにブックマーク livedoorクリップに登録 Choix!にブックマーク イザ!ブックマーク

print 印刷用ページの表示

ITA Issue 連載:相手の「解釈」に着目しながら問題を整理/構造化する、「合意形成」のためのモデル化テクニック

ロジカル・シンキングのツボ

第2回 相手の「解釈」に着目した、確実な合意形成手法を学ぶ

前編では、従来のロジカル・シンキングの基本的なテクニックを整理するとともに、その中で暗黙知とされてきた部分を形式知化した“新”思考テクニック体系「MALT」を紹介した。後編では、MALTが重視する「『解釈』に着目した合意形成」に焦点を絞り、その合意形成で必要となる考え方や具体的なテクニックを解説する。

2009年7月6日更新

text ●  林 浩一 ウルシステムズ ディレクター

相手の「解釈」に着目して確実な合意形成を目指す

 一般に、ロジカル・シンキングを考える際に気をつけなければならないことが1つある。それは、「話が論理的であること」と「その話に納得できること」とは別の話だということだ。論理的な主張を組み立てるというのは、すなわち論理構造を作ることである。ただし、たとえ論理構造を組み立てられたとしても、それが納得感のある提案になるかどうかはわからない。

 例えば、一般消費者向けの製品の開発/販売を行っている会社で、販売部門の担当者が上司に次のような提案をしたとする。

「わが社の直販サイトの売り上げが下がっています。Webサイトをリニューアルして使い勝手を向上させましょう」

図1:Webサイト・リニューアルの提案の論理構造

 
 この提案の論理構造は、図1のようになる。結論が根拠を支えるかたちになっているので、確かにこれは論理的な構造だと言える。しかし、この提案を聞いて上司が納得するかどうかは別の問題だ。判断のポイントとなるのは「結論を支えている根拠が妥当かどうか」という点だが、そもそも「提案を聞いた人が妥当だと思うかどうか」は、聞いた人の解釈の仕方次第なのである。

 では、この提案を聞いて、上司はどう反応するだろうか。予想される反応パターンを図2にまとめた。図2-@のように、競合他社も直販サイトをどんどんリニューアルして使い勝手を高めているのを知っている上司であれば、すんなりと納得してくれるかもしれない。あるいは、慎重な上司であれば、「売り上げが下がっている」というだけでは根拠として不十分だと考え、「結論が飛躍しすぎている」と判断するかもしれない(図2-A)。もし「直販サイトからの売り上げは落ちていても、代理店のWebサイトからの売り上げは向上している」というデータがあったとしたら、直販サイトをクローズするという結論になる可能性もある(図2-B)。

図2:提案を聞いた上司の反応

 いずれにせよ、従来のロジカル・シンキングで使われてきた3つのテクニックが有効なのは、論理構造を組み立てるところまでだ。ロジカル・シンキングでは、結論を導くには根拠が不十分な状態にあることを「ロジックに“飛び”がある」と表現するが、どうすればその“飛び”を解消できるのかという指針までは示されない。つまり、いかにして説得力のある論理構造を作るかというノウハウに関しては、暗黙知のままなのである。

「AIM&FIRE」で説得力のある論理構造を作る

 「MALT(Modeling As Logical Thinking)」では、説得力のある論理構造を作るために「AIM&FIRE」という手法を提案している。これは、「提案に納得感を感じるかどうかは相手次第なので、相手と対話するプロセスを考慮に入れよう」という考え方に基づくものだ。具体的には、論理構造の妥当性を検証するための概念「FIREモデル」と、それを利用した合意形成手順「AIM」の2つの要素で構成される。

●FIREモデルで論理構造の妥当性を検証する

図3:FIREモデル

 FIREモデルとは、人間が事実を認識してから、それに対して反応を示すまでの人間の内面のプロセスを抽象化したものである。このモデルの特徴は、事実の認識とそれに対する反応の間には、必ず解釈があることを前提にしている点だ。「事実(Fact)→解釈(Interpretation)→反応(REsponse)」という3段階のプロセスを想定したモデルであることから、それらの頭文字をとって「FIRE」と著者が名付けた(図3※1

 「何を当たり前のことを……」と思ったかもしれないが、上述した3段階のプロセスを理解しておくことが、「相手に受け入れられる論理構造」を作るうえで重要なポイントになる。上のWebサイト・リニューアルの例では、提案を出した販売担当者は、「直販サイトの売り上げが下がっている」のは「商品が見つけにくくて購買につながらないため」だと考えており、これを解消するために「リニューアルすべきだ」という結論を導き出している(図4)。この解釈を図2-@〜Bと比べてみると、提案を聞いた側の解釈との間には次のような違いが見られる。

図4:提案者側の解釈

●図2-@:結論は一致しているが、その根拠に対する解釈が異なっている
●図2-A:それでは根拠が不十分であり、結論を出せない
●図2-B:異なる解釈に基づき、反対の結論が出ている

 これらのうち、図2-@については、結論が一致しているので問題なさそうに見えるが、後になってやっかいなことが起きる可能性がある。提案した側では「商品の見つけやすさ」を改善するのがリニューアルの目的だと考えていても、提案を受けた側は競合との比較を念頭に置いているので、競合が行っているリニューアルのポイントが「商品の見つけやすさ」ではなかった場合、提案する側/される側とでリニューアル後のWebサイトのイメージが一致しなくなるおそれがあるのだ。

※1 実はこのモデルは、1980年代に認知科学者のDonald A. Norman氏が考案した、ユーザー・インタフェースを設計する際に使う「行為の7段階モデル」を簡略化したものだ。従来、ツールの設計は機能を中心に行われていたのだが、行為の7段階モデルでは人間の行動のほうをモデル化し、それに合わせて設計することで、「人間中心の設計」という考え方を打ち出したのである。これは、「ユーザーに受け入れられる操作性」を実現するための暗黙知を形式知化したものだと言える。

●AIMに沿って相手と解釈を合わせる

図5:解釈を合わせて納得感の高い論理構造を導く合意形成手法「AIM」

 解釈は、人間の頭の中で行われるものである。しかも、あまり明示的に行われないケースも多く、本人が意識していないことすらある。だとすると、論理構造に納得感があるかどうかは、突き詰めれば「提案してみなければわからない」という話になる。しかし、それでは困るので、「絶対」とまでは言えないにしても、できるだけ高い確度で納得してもらえる論理構造の作り方を知りたいところだ。そこで、MALTが用意している手法が「AIM」である(図5)。これは、「Advanced Interpretation Matching」、つまり先に相手と解釈を合わせることで納得感の高い論理構造を構築していく手順をまとめたものだ。

 解釈の仕方が合っていれば、後は事実を見せるだけで結論はおのずと一致する。解釈の合わせ方として、AIMでは「受動型」と「能動型」の2種類を定義しているが、ここでは能動型AIMの基本的な手順について、引き続きWebサイト・リニューアルの例を使って説明しよう。

ページの先頭へ戻る